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「あ、こんにちは」
一週間後。
いつも通りの一日を過ごし、家に帰ると、リビングにはお父さんの担当の編集者さんが来ていた。確か名前は鈴木さんだったっけ。
僕らの奇妙な家庭環境にも臆する事なくやってくる、不思議なお姉さんだ。
「ああ、こんにちは、天君。お邪魔してます」
「ども。…お父さん待ちですか?」
鈴木さんは、ハハ、と苦笑する。
「珍しく詰まってますよ、言葉に」
「そうですか…お疲れ様です」
鈴木さんは笑顔を返し、それから、お父さんが書き上げたところまでの原稿に視線を戻した。
担当さんが女の人なのは、お父さんを気遣ってのことなんだろうか。
始めは男の人だったらしいが、僕が物心つき始めた頃には鈴木さんに変わっていた。
鈴木さんは、そう考えるともうだいぶ長いことお父さんの担当についている。
きっとお父さんのこともよく知っているんだろうな。
「鈴木さんて、普段お父さんと何話すんですか?」
僕は鈴木さんの前に座り、鞄を置いた。
「話、ですか」
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