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鈴木さんは不思議そうに顔を上げる。
僕は曖昧に頷いて、学ランのボタンを外しつつ、テレビのリモコンを取った。
「僕、お父さんとは学校の話とかしかしないんで」
「ああ、お父さんの趣味とか、気になる感じ?」
「まあ、そんなところです」
鈴木さんはうーん、と小さく唸った。
「私もそんなに話はしませんよ。仕事のことが多いからかな。まあたまに、音楽の話とか写真の話とか…ああ、旅行の話もするかな」
ふぅん。
女の人相手だからって、別に女らしくお洒落の話とかするわけでもないか。
「でもねぇ、たまに思いますよ。ああ、この人私に合わせてくれてるんだなって」
「…そうなんですか?」
「だって、私は女でしょう?女性と話すのはやっぱり少し気を使うと思いますよ」
何だか、変な気分がした。
お父さんだって女なのに、女の人と話すのには気を使う、だなんて。
この人は、お父さんをどう思っているのだろうか。
「…鈴木さん」
鈴木さんは首を傾げ、ニッコリと笑った。
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