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「何でしょう」
「鈴木さんはお父さんをどう思ってるんですか?」
沈黙があった。
極端に聞き過ぎたな。ちょっと考えている。
それから鈴木さんは何かを思い付いたように顔を上げ、僕を真っ直ぐ見た。
「素敵な小説家で、いいお父さんだと思っています」
お父さん、か。
「りっちゃんお待たせ!やっと書き終わったよ」
ちょうどその時、お父さんがリビングヘやって来た。
手にはデータの入ったディスクを持っている。
「お疲れ様です、碧先生」
鈴木さんは立ち上がってそのディスクを受け取った。
「悪いな、待たせちゃってさ」
「ホント、急にラスト書き直す、なんて言われて焦っちゃいましたよ。後は編集部でチェックしますね」
「助かるなぁ、担当さんがりっちゃんみたいないい子だと」
「いい子なんて言える年齢じゃないです」
鈴木さんはそう言って笑うと、荷物を持ち、僕のほうを振り返った。
「じゃあ、お邪魔しました。勉強頑張ってね、天君」
僕は小さく会釈した。
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