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劉天風との立会は、国家の威信をかけたものである。 戦争ではないので、それ自体で現実的な利害は出ないが、ジワジワと力関係のバランスに影響する。 瀬織は陣平に勝たせる策を練っていた。 夜に行われる地下道場での稽古には、シズカとハカセが参加している。 シズカは天風を知っているのでサポート、ハカセは知恵の面からアドバイザーとして参加している。 瀬織は自分の考えを話した。 「相手の力量はわからないけれど、慣性制御は陣平に分があると思う。 天風は、たかだか70キログラムくらいの肉体を時速200キロで動かすパワー、 かたや、陣平は戦車を殴り飛ばしたり、何十トンもの重量を浮かせたりできる。 要は、パワーと防御は勝る…はず。 陣平が劣るとしたら、速度。 こいつはなめたら、だめ。 鉄砲の弾は、軽いけど、速いからスゴイ破壊力を発揮する。 天風は、量産型の意志レンジャーと違って、シズカの何でも切断する刀みたいなのを出せるかも知れない。 これが、至近距離から時速200キロで飛んできたら避けられない。 真っ二つにされてしまうわよ。 だからといって、以前のようにジェイクンに任せたオートパイロットは自滅する可能性が高い。」 陣平は、情けない声を出した。 「早くも手詰まりじゃん?」 瀬織は、首を横に振った。 「多少問題があるけど、前にも言ったように、速度を上げることは出来る。 ただ、実際はどこまで上げれば勝てるのか、どこまで陣平の体がついてくるのか、は、わからないけれど。」 シズカは短絡的に考えた。 「空に上がれば?少なくとも攻撃は届かない…のでは?」
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