1 前座

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もちろん、ホントの酔っぱらいではないから、平衡感覚や眠気などは正常だ。 ただ、意識が酔っぱらいということ。 これはいささか判断が甘くなる。」 ナデシコがさらに深刻な顔をした。 「戦闘では、慎重さが足りなくなる?」 「そういうことだ。」 差し入れの点心を食べ終えて、陣平はスラリの太ももに頭を乗せて寝転がった。 「ハカセ、大胆さも必要だろ?」 ハカセは、鼻の頭を撫でた。 「今までは、用心と慎重さが売りだった陣平なんだが、今ではもう、わからないか。」 陣平はうとうとしている。 スラリは陣平の頭をいじっている。 そして、ハカセの方を見るでもなく、ハカセに聞いた。 「そいつは、もとに戻ることはないのかな?」 「心理テストでの結果と、神経伝達物質の体内量を測った結果から述べただけで、先のことはわからない。 実例が無いようなもんだからな。」 と、言いながらもハカセは、シズカをみた。 気がついたシズカが先に言った。 「兄さんは元からあんな感じだから、あまり変わった気はしなかった。 ただ、残忍なことができるようには、なっていった気がする。」 ハカセは伸びをした。 「では、後は頼む。ベリーに運転してもらってクルマで来たのでな。待たせてるんだ。」 ハカセは去った。 シズカは 「大丈夫かな?」 と、独り言を言った。
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