9人が本棚に入れています
本棚に追加
陣平は肩をすくめた。
「こっちも攻撃できない。それは槍島でも考えた。俺の霊服のキャノン砲くらいじゃ、ダメージ与えられない。」
瀬織は結局、当初の考えで行くことにした。
「とにかく、限界まで速度アップする。
無理矢理上げるから、弊害出ても、それはガマンね。」
「どんな弊害が…」
「例えば、日常の速度が遅すぎて、イライラする。
自分の動く速さは霊服で調節できるけど、脳の感覚はそのままだから、すべてが遅く感じる。
霊服を張ってない生身での行動も、肉体の限界より速く動かしたくなる。感覚と肉体がずれるから仕方ない。
その結果、体がいつのまにか、限界越えて使われてボロボロになってるとか、あるかも。
その他にも、脳の回路を人でない領域まで改造するのだから、どんなことが起こるか、予測出来ない。
だから、アタシも自分の速度は上げすぎてないの。やる気になれば、もっと上がる。
脳の回路をいじりすぎた結果、思考力に影響して、今の"アタシ"でなくなる可能性がある。」
陣平は少々考えたが、
「やられて死ぬよりは、いい。」
と、即、結論付けた。
瀬織は、シズカに向き直る。
「陣平はあなたのために、今回は闘う。
そこんとこよくわかってあげて。
兄と陣平とがやりあうのは、心中複雑でしょうけど。」
シズカは眉をしかめた。
「どういうこと?」
「それは後で説明するわ。」
シズカは不満げではあるが、おとなしくうなずいた。
劉天風は灯りを消した部屋で、パソコンの画面に向かっている。
画面は、髭を蓄えたたくましい顔の老人が映っている。
テレビ電話で、中丹国の参謀部と回線をつないでいる。
最初のコメントを投稿しよう!