1 前座

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陣平は肩をすくめた。 「こっちも攻撃できない。それは槍島でも考えた。俺の霊服のキャノン砲くらいじゃ、ダメージ与えられない。」 瀬織は結局、当初の考えで行くことにした。 「とにかく、限界まで速度アップする。 無理矢理上げるから、弊害出ても、それはガマンね。」 「どんな弊害が…」 「例えば、日常の速度が遅すぎて、イライラする。 自分の動く速さは霊服で調節できるけど、脳の感覚はそのままだから、すべてが遅く感じる。 霊服を張ってない生身での行動も、肉体の限界より速く動かしたくなる。感覚と肉体がずれるから仕方ない。 その結果、体がいつのまにか、限界越えて使われてボロボロになってるとか、あるかも。 その他にも、脳の回路を人でない領域まで改造するのだから、どんなことが起こるか、予測出来ない。 だから、アタシも自分の速度は上げすぎてないの。やる気になれば、もっと上がる。 脳の回路をいじりすぎた結果、思考力に影響して、今の"アタシ"でなくなる可能性がある。」 陣平は少々考えたが、 「やられて死ぬよりは、いい。」 と、即、結論付けた。 瀬織は、シズカに向き直る。 「陣平はあなたのために、今回は闘う。 そこんとこよくわかってあげて。 兄と陣平とがやりあうのは、心中複雑でしょうけど。」 シズカは眉をしかめた。 「どういうこと?」 「それは後で説明するわ。」 シズカは不満げではあるが、おとなしくうなずいた。 劉天風は灯りを消した部屋で、パソコンの画面に向かっている。 画面は、髭を蓄えたたくましい顔の老人が映っている。 テレビ電話で、中丹国の参謀部と回線をつないでいる。
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