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陣平は深夜横になってはいたが、眠れなかった。
天風は殺し合いまで視野に入れて、臨んでくる。
陣平にはその気はない。仮にもシズカの兄だ。
「となると、圧倒的な力量がないと、あしらえないんだよな。殺しに来るヤツってのを殺さないで止めるには。」
ドアにノックがあった。
陣平が移った新築側の部屋は、面積も大きくなり、防音も上がったので、ノックはよく聞こえない。
陣平はドアを開けた。
パジャマのスラリがいた。
「主人のことだ。どうせ、寝つけないでモンモンしてたんだろ?
おじゃまするわ。」
さっさとスラリは部屋に入った。
陣平は、スラリは部屋に入り椅子にでも座るのかと思ったが、ベッドに直行して潜りこんだ。
「ほれ、寝る。話は寝ながら。遠慮するなよ。」
そういうところが瀬織に似てる、と思いながらベッドに入る。
「大体の話はハカセから聞いたよ。
で、負けそうなんだな。」
陣平は、スラリの物言いがストレートすぎてクスクス笑った。
「そうなんだ。負けそう。負けると死ぬかも。」
「ああ、アネサンいたら死にゃしない。」
「姉さんでも、即死してたら治せない。」
「黙って殺られるのを見てないだろうよ。」
「殺られるときは一瞬だ。相手は姉さんより速いから間に合わない。」
スラリは陣平の頭を撫でた。
「主人さあ、忘れてる。
霊服で力押しだけではなく、武術の要素を取り入れてるから、仙手と呼ぶんだろ?
動きが速くてとらえられないボクサーとやりあうとき、空手はどうするの?」
「三戦で体をしめて、防御、隙が出来たら、一撃で沈める、かな?」
「他にも手はあるよ。」
「足払いとか、かな?」
「地の利。」
「それは前に床をツルツルに滑らせるとか、やったけど、相手も場所は選んで来る。
対戦は、拓けた場所になるはず、あるいは立木が多ければ、相手も足場として利用するはず。立木に足をついて方向転換するとか…。
待てよ?
あ、そうか。どちらにしても、同じことなのか?」
スラリは
「わかったところで、ラブラブしながら寝るとするかあ。」
と、微笑んだ。
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