9人が本棚に入れています
本棚に追加
陣平はまず、しばらくは瀬織の施術で、強引に脳内伝達を速くしていく。
陣平の頭を手のひらで抱えて、施術しながら瀬織が言うには
「本来、自分で無理なくゆっくりやるのがいい。けど間に合わないからね。
何日かかけて、脳と全身の神経を強化するわ。」
と、いうことだ。
昼間は普通に学校に行く。
バランスをとるためと、体を休めるためだ。
施術の影響は2、3日もするとすぐに出てきた。
朝、登校するために電車に乗り、窓の外を見ていても、幼児のこぐ三輪車のようにノロノロとしているように見える。
見るからに陣平はカリカリし出した。
単に遅く感じるからだけではない。
脳神経をいじっている弊害もあるのだ。
全身から怒りのオーラが、立ち上るのが素人目にもわかる。腹ペコの虎がそこにいるようだ。
ナデシコが、声をかけた。
「あまり、イライラしないよう…周りの乗客まで怯えますから。」
陣平はナデシコをにらんだ。
「あ?!わかってる!」
シズカはハラハラしながら見守っていた。
学校に着いても、落ち着かない。
塩浜にナデシコはフォローを頼んで、自分のクラスに行った。
日に日に陣平は変貌していく。
イライラは収まってきた。
慣れてきたのだ。
速度の概念を植え付けるため、瀬織と陣平、ハカセは某サーキットにやって来た。
航空機では周りが開けているのでスピード感が薄い。そこで、レーシングカーの屋根に陣平を乗せ、レーシングカーで走ってもらい、速い速度の感覚を身に付けさせようというのだ。
市販車を改造したレーシングカーと、口の固いレーサーを用意した。
レーサーの男は、
「どうなっても知りませんよ。」
と、吐き捨て、車に乗り込んだ。
おかしなことをしてみたい若者の1人だと思っているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!