1 前座

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地下道場で、実際に速い速度の組手をしてみた。シズカとハカセは、部屋の隅に下がる。シズカは霊服を出して、ハカセをかばうように前に立つ。 相手は瀬織だ。 「アタシも速度アップしてるから、なんとかなるでしょう。」 陣平は霊服を張った。 「いっくよー!」 ハカセには2人が消えたように見える。 速すぎて、残像はあるのだが明確な動作がわからない。 シズカの後ろから、特殊なスピードガンで速度を計測する。 「時速120キロくらいだな。まだまだということか。」 無尽蔵にエネルギーを使える瀬織と異なり、陣平は3分ほどでバテた。 2人は止まる。 瀬織は頭をかいた。 「アタシもここまでしか速くならない。 精進しなきゃ。」 陣平は瀬織に抱きついた。 「ネーサン、気をおくれでないかい。」 「今、あげるわよ…あら?」 瀬織はスゴイ勢いで気が吸われるのを感じた。 陣平が瀬織から吸いだしている。 瀬織は驚いた。 気を取り込むのも、能力のうちだ。 「吸い取る能力がこんなに上がってるとは…」 陣平は、補給を完了した。 「うん。体力回復した。ありがと。」 陣平は離れた。 瀬織は陣平の顔を見た。 「あなた、脳や体の神経を太くしたら、態度も太くなったわ。その関係で気の吸収力も上がったのかしら?」 「わかんない。何となくできるようになったよ。」 陣平は子供のように瀬織を見返す。 才能が、解放されつつあるのか?と、瀬織は考えた。性格が邪魔していたのかと思う。 人間は持てる能力を、性格で潰している場合は多い。 そのタイプなのだろう。
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