居酒屋まるのバレンタイン

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「ええと・・・」 返す言葉を間違えると、大変ややこしいことになる。 受け入れる気はさらさらないが、かといって強く突っぱねすぎてもなあ。 いや、店主として、これだけ高級ワインを飲んでくれる客を逃したくないという・・・そんな動機はあまりにも腹黒いか。 ただ、真剣な、内容としては呆れるようなことを言っているミハイさんなんだが、どう見てもいたって真剣なこの人に、ちゃんと話さないといけない気がする。 「実はですね、この仕事を始めるまでは、大学を出て普通に会社に入って、営業マンとして働いていたんですよ。」 「知っている。」 入りたい会社に、俺は入ることができた。 超ラッキーだった。 その会社で、特にやりたい仕事があったわけじゃない。 打算的というか、けっこう計算高いかもしれないが、俺は給料の良さそうな会社を選んだんだよなあ。 だって、開店のための準備資金にしたかったから。
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