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死に損ないの、私はーーーー
「……ほえ?」
パーカーのポケットから振動を感じ、同時に愉快は着信音が鳴る。それは、聞き慣れた音で、電話の主が誰なのかは簡単に想像出来た。
ポケットから携帯を取り出し、通話の表示にタッチしてそれに耳をあてる。
「はい。……もしもし?」
そんな、当たり前の言葉で電話に出た。
『遅いんだよ、馬鹿』
電話越しに、サラリと酷い事を言う男。
「馬鹿ってどっちがよ……紫来(しらい)」
素っ気ない声で応えると、電話の男ーー紫来は、負けじと、冷たく、それでいてクールに対応してみせる。
『馬鹿って言って何が悪い。本当の事なんだから認めろよ。それで、俺はどうすればいい?』
「んー、西田区のラブホにいるから迎えに来てよ」
遠慮なく、ズバリと言う。
「はっ?え?……うあ!」
電話の向こうで何やら凄い音が鳴った。驚いて座っていた椅子から転落でもしたのだろう。いつもの事でいい加減慣れてきてもいい頃なのに、相変わらずオーバーリアクションだ。
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