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二週間後に控えた大学祭。僕はそのパンフレットや予算見積書の作成を引き受けた。始まりはおよそ一ヶ月前のこと。
僕のよく知る彼女が本来その担当であった。僕の立場はそんな彼女の友達。大学祭の実行委員でもなければ、無論バイト代が出るわけでもない。
「友達だからだよ」
「友達だから身をやつしてまで手伝うのか?」
「一度引き受けたことを最後までやり通すのは、友達とか関係なく義務だと思うけど」
「だからなんで区切りをつけずにあれもこれも引き受け続けてるのかって話だよ」
返答に詰まった。
パンフレットと予算見積書の作成――初めはそれ〝だけ〟の話だった。
やるべきことを抱え過ぎていっぱいいっぱいになっている彼女を見ていられなくて、少しだけ手伝うことにした。僕にはそれだけの時間があったから。
けれどその二つを仕上げて彼女にデータとして提出すると、今度はサークル毎の屋台展示箇所を表にしてほしいと頼まれた。僕は引き受けた。そんな感じであとはズルズルと。
「だいたい元はあの女の負うべき負荷じゃねえか。それに一度引き受けたことを自分で最後までやり通さないのは、友達とか以前に人としてズレてると思わないか?」
「あの子を悪く言うな」
「オレはおまえだ。だからおまえもそう思ってるはずだぜ?」
「オレはオレだ」
「ズレてるんだよ。おまえも、あの女も」
「あの子は!」
「『あの子』なんて気持ち悪いな。おまえが一人布団の中で夜な夜な呼んでる名前があるだろう」
「おまえ!」
立ち上がり一直線に〝やつ〟との距離を詰めてその胸ぐらを掴む。
それでも〝やつ〟のペースは崩れない。襟元を掴み返され、至近距離で再度口火を切ったのは〝やつ〟のほうだった。
「知ってるか? 『あの子』がおまえに仕事を手伝ってもらってる間になにしてるか」
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