【〇】 ―零―

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今日も大輔おじさんは家の前の歩道に水を撒いている。 そして優しい笑顔を見せ、制服姿の私と向き合い会釈を交わす。 「琴音ちゃん、おはよう。 今日から高校生だね! 新しい制服も似合ってるよ。」 「でしょ!? 紺ブレザーはもう卒業だからねっ!」 犬塚学園の制服は、初等部と中等部は紺色のブレザー、高等部は濃グレーのブレザーと決まっている。 そして、そのカラーに対応したスラックスやスカート。 高等部の制服は、濃グレーのブレザーに臙脂色のボトムスとネクタイを合わせる。 初等部や中等部に通う後輩たちにとって、この濃グレーのブレザーは憧れのアイテム。 私もこの9年間、ずっとこの制服に憧れていた。
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