Noblesse oblige ~ヒト・ノ・ソンゲン~

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わが密かなる、悪意の芽生え。 例えば、いま目の前に なんの危機感もなく 日向ぼっこしながら 念入りに毛繕いしている猫 脳内に溢れ出す満場の歓声 そして一定のリズムを刻む 拍手の雨と、ピッチに立つ私。 答えるように私は手を上げ、 高まる衝動を飼い慣らす。 拍手は、ある一転めがけて テンポを早め、その衝動を頂点へと導き、そして私は…… 何も、しなかった。 ただ、軽く地面を蹴って猫に教える。 お前は今、邪悪に打ち勝ったのだと。 それを私は人として 『最低の尊厳』 と言う。 人助けをしろとは言わない。 強きをくじき、弱きを助ける。 などと、所詮は虚構の箱のなか。 弱者救済、などと理想を掲げた 傲慢な人間を尊敬しろとは言わない。 ただ、自分の快楽のためだけに 無意味な衝動を正当化するな。 それだけだ。 Noblesse oblige 人は自らの善の主人であって、他の善を迫害しない救世主足らんことを。
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