陰翳 encounter 俺

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――ふぁ……。 良え陽気や。何日前から晴れっぱなしなんやろう。 斜向かいの“魚ゑん”で千代ばぁが鮭を値切っとるんのを見んのは……七日ぶりやな。 どうやらまだ、世界は七日間を繰り返しているらしい。 ここは天下の台所。飯と鉄砲の都、大坂は堺。 この分やともうすぐあいつらが……お、来よった来よった。 「おーい!くっきぃ持って来たで!」 「羽院津先生がくれてん!」 ――おぉ、今日もおおきに! ええ加減くっきぃは飽きた。言うて、七日前もこうやったし、しゃあない。今日の食い物があるだけありがたい話や。 はいんついうんは、南蛮から来た教師やとか。なんや、そいつがこいつらに菓子をやり、その内なんぼかが俺に回ってくる……っちゅう仕組みや。会ったことはあらへんけど、一応感謝はしとる。 「美味しい?」 「美味しい?」 ――おうよ! ――やっぱはいんつの菓子は美味いなぁ! 「わーい!」 「良かったぁ!」 「また明日も持って来たるな!」 「ほななー!」 ――気ぃ付けて帰るんやでー! 目一杯手ぇ振って翔けて行くガキ共を見送って、俺はまた座り込んだ。
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