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さて、それにしても見飽きたなぁ。数えんのも飽きたし正しくは覚えてへんけど、かれこれ20回以上この光景は見た。
ここに座り込んどってもしゃあない、その辺の屋根にでもと思った瞬間。
「聞いて下さいよーっ!」
抱き着かれた。おなごや。逃げよ。
じたばたする俺にお構い無しにおなごは続けよる。
「あのですねあのですね……」
……苦しい、逃げれん。
俺は諦めて話を聞いてやることにした。
えぇと確か、こいつの話は……ん?
「あんげんが居なくなっちゃって……」
――自分、誰や?
「……え?」
知らん。こんなやつ知らん。20回以上今日を見とるけど、知らん。おなごに話し掛けられたのなんぞこれが初めてや。
「……喋った」
――馬鹿にすんな。
「あ、ごめんなさい、あの、ちょっとごめんなさい」
おなごは急いで提げとった荷物を漁る。こないな往来で風呂敷広げるなんぞ、どんな用か思たら、なんや、よぉわからん字ぃと、よぉわからん絵の板。
その板におなごがごにょごにょ言うたら、光りよった。桔梗色や。
「……あの」
――あ?
「私と一緒に、世界を救って下さい!」
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