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双子の背の高い美女たちに退路を塞がれた。
今週の星占いを思い出した。
対人関係、トラブルの予感。
彼女たちはこの街の中国系マフィアのボディーガード。
リンとスー。
そして、彼女たちの雇い主は3日前に殺されていた。
家からほど近い小さな喫茶店。
店内は快適な気温に保たれている。
午後の昼下がりで他に客はいない。
双子がサングラスの奥からこちらををじっと見ている。
俺の格好は
ヨレヨレの白のタンクトップに青い短パン 。
胸を張ろう。
上から下まで合わせて双子のサングラス代にもならなくとも。
よく見ると双子は微妙に違っている。
リンの方が肉付きがよく、唇の横に小さな黒子がある。
「探偵さん」
無表情でリンが話しかけてきた。
流暢な日本語だ。
「私たちのことは知っているわね?」
頷いた。
凄腕のボディーガード。
いや、もう違う。
雇い主を殺された哀れな護衛だ。
俺は 待った。
俺のことを知っているなら喋らないことは承知しているはずだ。
「警察より先に見つけだして」とリンが言った。
主語がないけど、たぶん、私たちのボスを殺した 犯人を見つけだしての意味だろう。
首を斜めに振った。「探せるんでしょう?」
とリンが冷たい声で言った。
もう一度、今度はしっかり横に首を振った。
皿に残したグリンピースを母親に残さず食べるように言われた子供のように。
スーが俺の胸ぐらをつかんで引き寄せた。
マリリン・モンローと同じ香り。
シャネルの5番。
リンがおしゃべり、スーは腕力担当なのかもしれない。
ワーク・シェアリングの波は、ここまで押し寄せている。
「あなたの借金、私たちが肩代わりした」とリン。
ワオ、季節はずれのサンタクロースかも。
頷いた。
200万の報酬なら悪くはない。
「あなたは人とは違う能力を持っているって聞いたわ」
曖昧に頷いた。
俺は首だけで上手に感情表現が出来る。
スーが乱暴に手を離した。
優しさが足りないのは、たぶん、カルシウムが不足しているのだろう。
毎朝、牛乳を飲むようにアドバイスしようか?
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