接触

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我が職業は探偵。 無許可だから、名刺も事務所もない。 ショートヘアのキュートな笑顔な助手もいなけりゃ、 爪を磨くのに熱心な眼鏡をかけたツンデレ受付嬢もいない。 タウンページにも載らず、ホーム・ページもなし。 依頼人は人づてに俺のところに来る。 直接。 口はきけないが、特別な能力で人を探せる探偵。 気に入った仕事しかしない。 それも。水曜日の夜18時から日曜日までしかやらない。 月曜日から水曜日は業務用スーパーの冷凍庫で肉をおろしたり、吊るしたりしているから。 水曜日18時にタイム・カードを押して事務所を笑顔で退出してからが探偵仕事の時間だ。 なぜかって? この仕事は収入が不安定だから。 人はお腹がすく。 屋根のある家が欲しい。 たまにはギャンブルもしたい。 でも、フルタイムで食肉と格闘するのは嫌。 探偵の仕事は楽しい 俺には、他人にはない、とくべつゅ、もとい、特別な能力があったりする。 どんな能力かは誰も知らない。 仕事中は誰にも見せないから。 夕鶴のおつうと同じ。 違うのは、ぱたん、ぱたんと機を織らないだけだ。
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