最期の館

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友達が死んだ。 建物の入り口にあった足拭きマットのせいだ。 あれさえなければ助かったかもしれない。 あんなもの、誰が考えたんだろう。 そういうことは続くもので、悲しみから立ち直る間も無く祖父が死んだ。 祖父は和菓子が好きだった。 団子を食べて死んだ。 好きなものを食べて死ねたなら幸せだったのだろうか。 自分の身の回りに立て続けにこんな不幸があると、不安になる。 ふと耳にしたニュースで、近所の家で家族全員が倒れて死んでいたと言っていた。 こうなってくると、自分は兄弟も多く、 両親も健在なので、今生きていられることが幸せなのかもしれないと思える。 そういえば、兄の友達も死んだと言っていた。夜中歩いていて事故にあったらしい。 父はよく「おいしい話には気を付けろ」と言っている。 この話とは少し違うかもしれないが、 先日あやうく命を落としそうになる事件があった。 ある建物の横を通ると、窓からとてもいい匂いがした。なんの匂いだろうと建物の入り口に近づいた。中に入ろうか悩んだが、父の言葉を思い出し、引き返した。 後から聞いた話だが、友達が死んだのはその建物の中だった。 父にその話をすると、 父もその建物に入ったことがあると言う。 その頃は、入り口に足拭きマットはなかったという。 中に入ると足が床にくっついて歩けなくなるらしい。 幸い父は油の上を歩いた後だったため、なんとか脱出して助かった。 足拭きマットさえなければ友達だって助かったかもしれない。 一体俺たちが何をしたって言うのだろう。ただ散歩してるだけで、人間達はキャーキャーと悲鳴をあげて殺そうとする。 昔は何かで叩かれるのが普通だったため、逃げ切ることもできたが、最近は飛んで逃げようとしてもスプレーで遠くから攻撃してくる。俺も少量吸ってしまったことがあるが、少量でも本当に苦しくて、しばらく息ができなかった。 最近、人間の前に現れなければ長生きができる事を学んだ。 うまく世渡りしていこうと思う。
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