平凡と就職と非常識と

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「あーダメだ。全然ダメだ。これで何度目だよちくしょう。」 受験失敗から3ヶ月。 定職を探す俺の部屋は、求人情報紙であふれていた。 すでに20社からの不採用通知が届いた今日この頃である。 最早俺には貧乏神か何かでも憑いてるんじゃないかと疑う程だ。 「選んでる余裕は無ぇよなぁ。こうなったら清掃員でも何でも・・・ん?」 と、妥協という名の甘い誘惑に落ちかけていた俺の目にあり得ない文字が飛び込んできた。 「電話対応の仕事、男女年齢問わず、勤務時間9時~5時、時給2000円!!?」 何だ、この条件・・・怪しいが、本当かよ。とてつもないブラック企業とかゆうオチじゃないだろうな。 しかし、今の俺にはかなりおいしい。 自慢ではないが、高校3年間を勉強に費やした俺は体力に自信がない。 会社の住所を見ると、案外近くにあるようだ。 もし受かれば通勤にも便利だ。 「この好条件・・・かなり競争率が激しいはずだよな。」 それでも、受けないよりはましだ。 そうして俺は書面に書かれた番号に電話をかけることにしたのだが、今思えば、この時の俺を殴り飛ばして小一時間説教をしてやりたい。 甘い言葉には裏がある、と。
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