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「いいの、このままで……。離しちゃ、ダメ」
通学、通勤の面々が、次々とあたしたちを追い越していく。
邪魔そうに顔をしかめる人、ひそひそ話をする人、……同じ制服を着た人。
「あたしが、離さない」
千尋くんは、ありえないものが目の前にあると言わんばかりに、あたしの顔と手を何度も交互に見る。
そして、下から見上げるように、あたしの顔を覗いてきた。
「なんで?」
「っ……」
上目遣いは可愛い。
でも、面白がってる顔。
手も、あたしが握っていたはずが、いつの間にか握り返されている。
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