「好きだから」

29/39
前へ
/399ページ
次へ
「いいの、このままで……。離しちゃ、ダメ」 通学、通勤の面々が、次々とあたしたちを追い越していく。 邪魔そうに顔をしかめる人、ひそひそ話をする人、……同じ制服を着た人。 「あたしが、離さない」 千尋くんは、ありえないものが目の前にあると言わんばかりに、あたしの顔と手を何度も交互に見る。 そして、下から見上げるように、あたしの顔を覗いてきた。 「なんで?」 「っ……」 上目遣いは可愛い。 でも、面白がってる顔。 手も、あたしが握っていたはずが、いつの間にか握り返されている。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5446人が本棚に入れています
本棚に追加