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「お、時間」
横沢くんは、そう言って立ち上がり、
「ふたりとも、また明日な」
あたしたちに向かって手を挙げ、改札口へ歩いていった。
「あの人、かっこいいな……」
千尋くんは、横沢くんの背中を見送りながら、呟く。
「そうだね……」
あたしが相づちをうつと、自分で言ったくせに千尋くんは不機嫌そうに、あたしに抱きつく腕をきつくした。
「ちょ、な、なに?」
「いや、なんか、ムカついた」
「自分から言いだしたんでしょ」
「柚穂さんが言うのは、意味が違うじゃん」
「違くないよ……」
確かに、あたしは以前横沢くんを好きで。
千尋くんも、それを間近で見ていた。
でも。
「あたしが好きなの、千尋くんだもん……」
声をわざと小さくしたせいで、
「え、なに?全く聞こえないんだけど」
案の定、何も届かなかった。
「バカって言ったんだよ、バカ」
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