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他校で、おまけにお互い違う方向の電車に乗るわけで。
唯一会える可能性があった部活も入部できなくて。
その中で、なんとか見つけた接点。
それが、電車を待つ間の、10分間だった。
「あ、そろそろ下り電車くるから……――」
横沢くんが立ち上がった時だった。
「おはよーございまーすっ。ご主人様!」
大きな声で駅に飛び込んで来たのは、3日前から現れた乱入者。
狭い駅。そんなところで、そんな怪しい大声を出してしまえば、当然目立つわけで。
「ちょっ……、千尋(ちひろ)くん!」
あたしは慌てて駆け寄り、彼の口を塞ぐ。
「も……、変なこと言っちゃダメでしょ」
「変じゃないですよ。柚穂さんは、俺のご主人様でしょ?」
「それが変なんだよ……」
栄(さかえ)千尋くんは、ひとつ下の後輩。
彼も元サッカー部の仲間で、先日あたしと同じ高校に入学してきた。
そして、中学時代のおかしな賭けの続きを、再開させたのだった。
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