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「困るよ、お客さん。
ちゃんと見ててくれなきゃ!」
宇崎はなんのことかわからず、
しばらく返答に困っていた。
「こちらのお宅の方ですか?」
「そうですが」
「申し訳ない。
一方通行とは知らずに、
入って来ちゃいましてね。
お宅の車が見えたんで、
慌ててUターンしようと思ったら、
この始末でさあ。
お客さんに、
ちゃんと見ててくれるように頼んだんですがね・・・。
いえ、ご心配なく。
保険でちゃんと弁償させていただきますから」
「わかりました。
とりあえず中でお話いたしましょう」
遠藤は女に気づかれないように、
宇崎と倫子に向かって、
得意満面の笑顔でウインクをした。
「やるわね、遠藤さんも」
その大胆な作戦に迷わず挑戦した遠藤に、
倫子は投げキッスのご褒美を進呈した。
それを見て、
宇崎はやっと、
遠藤の企みを知ることができた。
女は車を車庫に収めると、
遠藤を玄関から手招いた。
「ついさっきまであかの他人だった僕に、
どうしてここまで・・・」
遠藤の過剰なまでの手助けに、
宇崎は思わず涙ぐんでしまった。
「お客さん、
泣いたってだめだよ!
警察に説明しなきゃいけないんだから、
ちゃんと最後まで付き合ってもらうからね!」
閑静な高級住宅街に、
響きわたるほどの大きな声で言うと、
宇崎と倫子の肩を両手で抱き、
まるで我が家に招くように遠藤は、
二人を家の中に誘った・・・。
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