第9話

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「困るよ、お客さん。 ちゃんと見ててくれなきゃ!」 宇崎はなんのことかわからず、 しばらく返答に困っていた。 「こちらのお宅の方ですか?」 「そうですが」 「申し訳ない。 一方通行とは知らずに、 入って来ちゃいましてね。 お宅の車が見えたんで、 慌ててUターンしようと思ったら、 この始末でさあ。 お客さんに、 ちゃんと見ててくれるように頼んだんですがね・・・。 いえ、ご心配なく。 保険でちゃんと弁償させていただきますから」 「わかりました。 とりあえず中でお話いたしましょう」 遠藤は女に気づかれないように、 宇崎と倫子に向かって、 得意満面の笑顔でウインクをした。 「やるわね、遠藤さんも」 その大胆な作戦に迷わず挑戦した遠藤に、 倫子は投げキッスのご褒美を進呈した。 それを見て、 宇崎はやっと、 遠藤の企みを知ることができた。 女は車を車庫に収めると、 遠藤を玄関から手招いた。 「ついさっきまであかの他人だった僕に、 どうしてここまで・・・」 遠藤の過剰なまでの手助けに、 宇崎は思わず涙ぐんでしまった。 「お客さん、 泣いたってだめだよ! 警察に説明しなきゃいけないんだから、 ちゃんと最後まで付き合ってもらうからね!」 閑静な高級住宅街に、 響きわたるほどの大きな声で言うと、 宇崎と倫子の肩を両手で抱き、 まるで我が家に招くように遠藤は、 二人を家の中に誘った・・・。
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