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「遠藤さん、
たしか表札は、
『村瀬』でしたよね」
「ああ」
「・・・そうか!村瀬国弘だ!
新民党幹事長の!」
倫子は宇崎の言葉から、
テレビでよく見る村瀬の顔を脳裏に表示し、
今強烈に嗅覚を刺激する邪悪な匂いと、
結び付けていた。
「くそぉ!
下手に動けないぞ!」
宇崎は新聞記者という職業柄、
政治家には、
一般市民と同じようには法律が働かないことを、
よく知っていた。
「楽しみだね宇崎さん。
村瀬って、
次の首相を狙っている奴だろ?
面白えじゃねえか。
たとえ家族が犯人でも、
大スキャンダルだ。
派手に弔い合戦、
仕掛けてやりましょうよ!」
遠藤は、
ケースに入った葉巻を何本か懐にしまいながら、
まるで武将のように立ち上がると、
宇崎と倫子の肩に手を乗せ、
力強く抱き寄せた。
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