第1話

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うつ病という病気は、人により理由はさまざまあるだろうけど、夜寝る時に明日がくるのが楽しみで、そういう気持ちで眠りにつける病気ではない。そのまったく反対で、明日などこないでほしいと願い、明日がくることに大きな不安を抱き、焦り、絶望感に襲われ、眠ることもできず、死にたいとさえ思うこともあり、どうにか薬によって、気絶するようにして寝ることしかできないものだ。 俺もそうだった。今でも時々、フラッシュバックのようにして、その言いようのない漠とした不安、そして無力感、絶望感に襲われることがある。明日に希望などまったくない状態が続くのだからしょうがない。でも、例えばたったひとつでも、希望の欠片のようなものを見つけることができるなら、それは偶然だったり、ちょっとした勇気やあるいは気まぐれというものかもしれないけど、俺の場合、何かを変えたくて、そしてなんとなく内心からの要求でもあったかもしれないが、家でちゃんとコーヒーを淹れて飲むことにした。俺の人生で初めてのことです。 これだけのことだけど、夜寝る時に、寝ようとする時に、「あぁ、明日も美味しいコーヒーを飲もう」と思う。「午前中に美味しいコーヒーを飲もう」と思い、その味や香りを想像する。他は何も変わらないけれど、明日がきてもいい気がしてくる。たった1、2杯のコーヒーだけのことなのにです。もしそれが「明日もあなたに会いたい」「明日もあなたと一緒にいたい」と思って、眠ることができたなら、それは、人は一生希望を捨てずに生きていけるのではないかと思う。
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