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「……はぁ。あんたも相変わらずねぇ、青菜」
「えっ?あっ、時玻お姉ちゃんだ!」
何事もなかったかのように青菜は泣き止む。子ども特有の無邪気な反応に思わず頬が緩む。
この子は四方神の一人『青龍』の一人娘「青菜」だ。
人間と妖怪の間に生まれた子である青菜は言うまでもなく半妖。確か生まれてまだ間もないと言っていたはずだが、随分成長している。
妖怪の成長度合いは子供のうちは早く、成熟してからは遅くなるというが本当だったらしい。
にしても、これだけ水浸しに出来るくらいの術が使えるってどんな成長度合い?
一体どういう教育してんのよ、あいつ。
「この水、青菜がやったの?」
「ううん。お母様がやった」
……何ですって?マジで何やってんの?あいつ。
「……えっと、なんでこうなったの?簡単にさっきまでやってたこと言ってくれる?」
「なんかね、お風呂でお母様と水遊びしようとしたらね。急に虫が出てきてね。水がどっぴゃ~って出て来たの」
急に虫が出てきて妖力の加減が狂ったからこうなったってことか。
わかりやすい。実にわかりやすいよ。だが同情の余地はなし。即刻直してもらうわ。
「ありがとう、青菜。それでお母さん何処にいるか知ってる?」
「えっとね、お母様は水の中です」
「水?」
そう言われて床の水に目を向ける。
そこに映っている筈のあたし達の顔は無く、その代わりと言っては何だが、別の奴が平然と毅然と実に偉そうな態度でそこに立っていた。
「……一人娘をほったらかしてなにやってんのよ。あんたは」
あたしは水面に話しかける。
「時玻。その言い方はずるいわね。私はべつに育児放棄をした覚えはないのだけれど。それに、あなたならそうじゃないことくらいわかっているんでしょ?」
水面からぬるりと出て来た青龍は、つらつらと水が流れるが如く言葉を話す。
人の姿で現れた青龍は虎丸が着ている服の色違いの着物に青龍の家紋が入ったスカーフを身にまとっている。髪も長く絹糸の様に綺麗で顔立ちも整っているし、体のバランスも絶妙に良く、全く非の打ち所がない美人。……手合わせなら負けないけど、うん。
……まだ十八歳。まだだ。まだ終わらんよ。
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