第4話

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あたし達は場所を普段あまり使わない小さな客室間へ移した。 「これでよし。じゃあ話してもらおうかしら」 防音の結界を部屋にかけて青龍に話しかける。 「えぇ。じゃあ唐突で申し訳ないのだけどこれに見覚えがないかしら?」 紫の風呂敷に身を包んだ小物が差し出される。 一瞬でも小判かと思ったあたしが憎い。 「なにこれ?」 「開けて見て」 青龍の言われるままに風呂敷の包みに手を掛ける。そして、 「え―――――」 驚きのあまり声を上げた。 「……やっぱりあるのね」 「……なんであんたがこれを持ってんのよ?」 差し出されたのは扇子。 それもただの扇子じゃない。 伝記によると世界樹と言われた御神木を使って作られた一級品であり、天巫女だけが持つ事を許された代物だ。名称は【天扇】。そして別の類で呼ぶなら【神器】とも言える。 神器はそれぞれ物に宿ると言われ、東洋地方にのみ七個存在するとされている。 今見つかっているのはこの扇子ともう一つ、陰陽師の党首が持っている。 そんな物が今、持ち主を離れ、友人の手から差し出されてあたしの目の前にある。 「森で誰かが戦った痕跡があるからその埋め合わせを手伝って欲しいと、玄武から昨日の夜に伝達があったのよ」 「戦った痕跡……」 間違いない。師匠とベリアルが戦った跡だ。気がついたのはそれだけじゃない。 (それに昨日?……あたしが帰って来た日じゃない。ということはつまり……) 記憶は地続きだったってことだ。 転移した場所はあたしの家がある山。真っ暗山とは反対に位置し尚且つ記憶喪失。 (……読めたわ。そういうことだったのね) あたしは現世に行った訳じゃない。記憶を失ったまま、眠っていただけ。 あれは恐らく幻想。 こんなにも初めから記憶の行き違いがあったなんて……。
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