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「酷い有様だったわ。一体どんな戦い方をすれば、地面の一部が跡形もなく消えるのかしら?まるで何かの境界線を作ったかのように……ね?そこにこれが落ちていたの。わかってもらえたかしら?」
青龍はあたしの顔色を伺いながらそう言った。
(師匠……)
右手が震えるのを必死に左手で抑え込み曖昧な笑顔で取り繕った。
「……へぇ。なかなか興味深い話じゃない。またどっかの妖怪達が喧嘩でもしたんじゃない?」
「時玻」
無理に笑い話にしようとしたのが無茶だったか、青龍は全てを見透かした様な目つきであたしを黙らした。
「あなた、どこまで知っているの?」
冷や汗が頬を伝い、服に落ちる。
緊迫した空気に気圧されそうだ。
あたしは天井を見上げる。
「……全部。そうあたしが言ったらあんたどうするつもり?」
青龍は静かに立ち上がり、あたしの目を見てこう言った。
「別に?何もしないわ。あなたが知っていようが知っていまいが、私にとっては関係がないから」
突拍子もない返事に目が丸くなる。
「あんたは気にならないの?あの森で何があったのか」
「気にならないといえば嘘になるわ。でも、例え私がそれを知ったとしても、自分から動く事はないわね。それは私のすることではないもの」
天井に向けた目線をやめ、青龍の顔をジト目で見る。
「それどういう意味よ」
「妖怪を頼ってきたあなたならわかるでしょ?わからないなんて言わせないわよ。時玻」
青龍はやや小馬鹿にしたようにそれでいて優しく微笑みながら言った。
完全に理解は出来なかったが何となく、あたしを気遣ってくれた言葉なんだと思えた。
「……子育てしてる奥様は言うことが違いますわねぇー」
頬杖をつき、皮肉の一つを吐き捨てる。
「でもまぁ……感謝するわ。青龍」
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