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「通りで青菜がここにいたわけだ。おかげで大変な目にあったぜ……」
顔に絆創膏を貼った火那がそう話す。
「一体青菜にどんなことされたのよ?」
「オリジナル関節技の実験台にされたんだよ……完全に決まってたら骨がバキバキだったぜ」
「じゃあさしづめこの傷は抜け出した後に壁にでもぶつけたってことね。たかが関節技くらいで大袈裟ねぇ」
治療道具を片付けたあたしは立ち上がり火那を見下ろした。
「じゃあ次は時玻が餌食になる番だぜ」
「あたしは遠慮しとくわ。第一あたしにそんなことをするような子じゃないもの」
「なんだよそりゃ……。ところで今日はどうすんだ?」
押入れに箱を直して後ろを向くと火那が頬杖をつきながらぶっきらぼうにそう聞いてきた。
「何も起こらないなら出掛けようと思ってるけど」
「そうか。でも傷の方はいいのかよ?」
彼方此方に巻かれている包帯を指さす。
そう言えば、体の痛みが全くない。昨日の夜は軽く疼いたのに。完治するには早過ぎる。
「どこも痛くないから逆に怖いくらいよ。一体どんな治療したのか教えて欲しいわ」
「村正が止血して天乃が消毒。虎丸が治癒術を使ってあたしが活力を与えたんだぜ。感謝しろよな。傷が残らないように努力してやったんだから」
「そ、それは悪かったわね。」
デカイ態度でふんぞりかえる火那に苦笑いで礼を述べる。
「でも、虎丸の治癒術ってなによ?初めて聞いたけど」
「なんでも外部からあれこれ治療するより、時玻の体自身に治して貰うのが早いとかで時玻の中にある神通力で治してたぜ?」
「あたしの?……あっ!」
ようやくわかった。それで昨日はあんなに体が重かったのか。
貧血だと思ってたわ……。
「なるほどね。昨日の晩のアレはそういうことか……」
「まぁ出掛けるなら無理だけはすんなよ。病み上がりなんだから」
「肝に命じとくわ」
「ん。じゃああたしも出掛けるぜ。また後でなー」
「えっ?一緒に来ないの?」
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