第32章 消えたネックレス

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 木内は、止めを刺すように続けた。 「このネックレスは、矢崎の殺害現場と目されている釜ヶ淵で見つかったものだ」  愛子が、狐に摘まれたような顔で木内を見た。 「もう一度良く見てくれや。あなたの物で間違いないな?」  彼女は、ネックレスを間近で見詰めた。 「確かに、これは私の物のようです。でも、確かに化粧棚の引き出しに入れて置いたはずなのに、何故、釜ヶ淵なんかに?」  戸惑う愛子に構わず、木内は質問をぶつけた。 「それと、5日前の夕方、あなたは、何処で何をしていた?」 「急にそんな事聞かれても…確か社長室で仕事をしていたと思いますけど」 「それを証明してくれる人はいるのか?」 「さぁ、どうだったかしら…、何だか気が動?して、よく思い出せません」とこめかみを押さえた。 「ちょっと署までご同行願おうかな。取調室で、ゆっくりと話を伺いましょう」  木内は、愛子をパトカーへ同乗させて佐久署へ向かった。  外は、激しい雨が降っていた。  雨滴が路面を叩き、しぶきが銀色に煙っていた。
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