第33章 アリバイ崩し

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 金子は、矢崎が殺害されたと推定される5日前の夕方に、愛子に電話したかを尋ねた。 「出張先から電話したな。詳しい日時までは覚えてねぇだな。ちょっと待ってくれや。手帳を見るから、オイ、かあさん。俺の手帳持って来てくれや」  遠山が、電話口で妻に向かって叫んだ。  数分ぐらいして、妻が手帳を持ってきたようで、遠山が指先に唾を付けて、ページを捲る音が聞こえた。 「愛子さんに電話したのは5日前だな。会合が終わって、ホテルに戻ってからだったから、時間も、大体5時くらいだな。」 「話をした時間はどの位ですか?」 「正確には覚えてねぇが、30分ぐらい、若しかしたら一時間くらいは話したかも知れねぇな」 「会話の内容を教えてください?」 「そんな事も言わなきゃならなんのか?」  遠山は嫌そうな声で言った。 「彼女の証言が正しいかを判断するために、重要なんすよ」 「それなら仕方ねぇな、教えてやるよ。実は、ここだけの話だぞ。愛子さんと逢引の約束をしてただよ」 「遠山さん、冗談は顔だけにして下さいよ」 「はっはっは、ジョークだよ。でも、一度で良いから、あんな良い女と逢引してみてぇもんだな。あのボンボンには勿体ねぇ女だ」 「遠山さん、そんな与太話は止して、本題に入ってくれませんか」 「分かったよ。愛子さんが犯人などと、馬鹿げた事を警察が言うもんで、ちょっと茶化したんだよ。それにしても、彼女を疑うなんで、警察も焼きが回ったな」
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