第33章 アリバイ崩し

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「殺害場所の釜ヶ淵で、愛子さんのネックレスが見つかったんです。それよりも、早く、電話の内容を教えてくれませんか」 「フォトコンテストで、授与役をやって貰ったお礼と、来年もまたやって欲しいというお願いだな。あとは、仕事の話しだ」 「仕事というと具体的になんですか?」 「今、星川観興で計画しているコンドミニアム建設に関する話だよ。その設計を、俺の会社でやらせて欲しいと売り込んでいたんだ。社長に頼むのは、嫌だから、愛子さんにお願いしたんだ」 「その件は、今問題になっている大規模開発と絡む仕事ですか?」 「馬鹿垂れ。あんな無茶な開発とは違うわい。コンドミニアムの件については、会長の健一郎から、幼馴染(おさななじみ)のよしみで教えてもらったんだ」 「そうですか、では、愛子さんと電話したのは間違いないですね」 「あぁ、それは間違いねぇだ 「分かりました。ご協力、ありがとうございました」  金子は電話を置いた。遠山と愛子の証言は一致した。  金子は、取調室に戻り木内に耳打ちをした。  証言の裏が取れたことを伝えると、木内は眉を吊り上げてから、毛虫を嘗めたような渋面になった。 「愛子さん、唐突ですが、あたなの旧姓を教えて下さい?」 と金子は尋ねた。 「旧姓ですか…それが何か、事件と何か関係あるんですか?」 と投げ槍に言って、視線を逸らした。 「取りあえず関係あると言っておきましょう。黙秘しても、どうせ調べれば分かる事です。正直に答えて下さい」
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