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「旧姓は、大塚です」
「そうですか、大塚ですか…」と髯をいじった。
「それが、何か?」
「いやっ、別に大した事ではないんです。ちょっと、気になっただけですよ」
夕焼けの写真の送り先は、前田早紀だった。
金子は、その女性が、愛子の母ではないかと考えて、愛子に旧姓を尋ねた。しかし、空振りに終わってしまった。
金子は、事務所に戻り、婦警の依田麻紀の肩を叩いた。
麻紀は金子と同期で、何かと仕事に融通を利かせてくれる。優しい笑顔が印象的で、捜査に行き詰った時に、その笑顔を見ると、ほっとする。
「麻紀ちゃん、ちょっとお願いがあるんだ。今、取調べ中の星川愛子の親戚関係を洗って欲しいんだ。それと、前田早紀という女性の素性も調べてくれ。前田早紀の住所は、静岡県藤枝市仮宿という所だ」
「データはいつまでに欲しいの?」
「そうだね、なるべく早く欲しい。出来れば今日中に欲しいな」
「随分と急ぐのね」
「次の犠牲者が出る前になんとか知りたいんだ」
「了解、分かったわ。頑張って調べてみるわ」
「ありがとう、今度、晩飯でも奢るよ」
金子は、麻紀にウィンクしてから、取調室に戻った。
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