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第34章 犬養の決意
犬養は、矢崎殺しの犯人が愛子でないと確信していたので、愛子が連行されたと聞いて、犬養の心には、警察に対する失望感が広がった。このままではいけないと思い、稲葉の所に向かった。
執務室(しつむしつ)のドアをノックして、中に入った。
稲葉は椅子に座り、デスクの背後にある窓から、雷雨を眺めていた。
「稲葉さん、話があるんです。ちょっと、良いですか」
「犬養か、どうした」
稲葉は椅子を反転させて、犬養と向き合った。
「愛子さんが、連行されたと聞きましたが…」
「あぁ、そのようだな」
「あたなは、裏切ったんですね?」
「人聞きの悪い事を言うなよ。私は、誰のネックレスか聞かれたから答えただけだよ。確証はないが、目にした事はあったのは事実だからな。変に嘘を付いて、俺が疑われても困るからな」
「あなたは愛子さんを警察に売ったんです。なぜなら、矢崎さんを殺害したのは、あなただからです」と見据えた。
「ば、馬鹿を言うな、冗談も程ほどにしろ!」
稲葉が、机を激しく叩いて、犬養を睥睨(へいげい)した。
犬養は怯まずに言った。
「僕は、あの写真を見て、ピンと来ました」
「ふん、お前も馬鹿な刑事と同じ事をいうんだな。利尻岳の夕焼けの写真らしいが、あんな影絵みたいな写真で何が分かるという んだ。くだらん、話にならないな」と鼻で笑った。
「僕がピンと来たと言ったのは、夕焼けの写真ではありません。茶髪にサングラスをした男の写真の方です」
「茶髪…あの破られた写真の事か…」
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