第34章 犬養の決意

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 その不安が、あなたを犯罪に駆り立てた。そして、あなたは、矢崎さんから、写真を奪う計画を立てた。当初は、殺す気はなかった。しかし、正体がばれてしまったあなたは、矢崎さんを殺してしまった。そして、恐ろしくなり、事故死に見せかけるため、下流の佐久まで遺体を車で運び、川に捨てた」 「何故、わざわざ、佐久まで運んで捨てる必要があると言うんだ…滑稽な推理だな」 「釜ヶ淵(かまがふち)で遺体が発見されれば、殺害場所を警察に教えているようなものです。頭の良い稲葉さんが、そんな愚かな事をするとは思えませんね。それに、川に捨てるために、あの場所を選んだ理由は、地理的に詳しいからですよ」 「何故、そんな事がいえる?」 「湯川温泉ですよ。最近、あなたは、温泉経営コンサルタントの仕事で何度も湯川温泉に行っています。仕事以外でも美人女将と懇意な仲になっているを僕は知っています。相沢さんが、心配していましたよ」 「ふん、あのおしゃべり娘め」 「残念ながら、あなたには、計算外のことが三つあった。一つ目は、矢崎さんが、少し離れた林道に駐車していた事。二つ目は、湯川ダムの存在を知らなかった事。三つ目は、目的の写真を、矢崎さんが部屋で破り捨てていた事」 「俺を犯人だと決め付けているらしいが、証拠はあるのか?お前の言っている事は、所詮、推理の域を出ていない。それに、殺害現場には、副社長のネックレスが落ちていた。彼女が犯人だという動かぬ証拠だろう。警察もそう判断したんだ」
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