第31章 北海道の七夕

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「綺麗な写真ですね。これが何か?」と平然と答えた。 「すっとぼけるのも好い加減にしろよ。ここに写っているのは、お前だろう」  木内はシルエットを指差した。 「すっとぼける何も、知らないものは知らないんですよ」 「これは、七月七日に、サロベツの海岸で撮影されたものだ」 「ほう、サロベツの写真ですか。したら、この海の向こうの山は、利尻岳ですかね」 「あんた妙に詳しいな。俺なんか、サロベツも利尻も何処にあるかさっぱり分からなかったのにな。どうやら、尻尾を出してしまったようだな」  木内は、ギロリと稲葉を睨んだ。 「利尻岳ぐらいは、常識っしょや、刑事さん。日本百名山の最初の山だよ。事件ばっかり追いかけてるから常識に疎くなってるんでないの?今度、警察の慰安旅行で、北海道に旅行でも行ってくればいいっしょ。警察には、裏金っていうのがあるんでしょ?最近、よくテレビで報道されてますよね」  稲葉が小馬鹿にした態度を取った。 「それ以上、警察を愚弄するような事を言ったら、公務執行妨害でしょっ引くぞ、この野郎」   木内は凄んだ。 「別に馬鹿にした訳じゃないですよ。北海道では、サロベツや利尻なんて常識なんですよ。私は、道産子ですからね。信州人だったら善光寺や諏訪湖は、常識でしょう。軽井沢や佐久の人だったら、みんな浅間山を知ってますよね。それと同じですよ」 と悪びれる様子もなく飄々(ひょうひょう)と言った。
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