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「残念ですね。北海道は、そんなに高速道路網が発達していないんですよ。高速は、札幌から旭川までです」
「そんなもん、ヘリか飛行機を使えば何とでもなるわ」
「まぁ、そんなに疑うのならご勝手にどうぞ。そうだ、思い出しましたよ。あの日の夕食は、札幌駅の駅ビルにある寿司屋で友人と一緒に食べましたよ」
「ふん、取ってつけたような嘘を言うな。証拠はあるのか。あるなら見せてみろや」
「確か、レシートが、まだ財布の中に入っていたはずです」
稲葉は、財布からレシートをごっそりと出した。そして、机の上に広げて、その中の一枚を引き出した。
「あった、これこれ。刑事さん、このレシートを見て下さいよ。七月七日の午後7時10分と書いてあるっしょ」と勝ち誇った顔をした。
木内は、レシートをふんだくって見た。
レシートの発行時間は、七月七日、午後7時10分、住所も札幌市となっていて、電話番号も書いてあった。
「ここの回転すし屋は、なまら旨いんですよ。もし札幌に行く事があったら是非寄って下さいよ。花丸っていう店です。根室から直送しているから鮮度は抜群です。それに、北海道ならではのネタが、なまら旨い。あの日、食った寿司では、赤ゾイという魚がうまかったなぁ。見た目は鯛のような感じで、舌の上に乗せるとトロリとした甘みがあって旨かったなぁ。あれは絶品だったなぁ」
木内は、レシートを注意深く調べたが偽造している訳ではなさそうだった。
発行時間が、午後7時10分と、七月七日の日の入り時刻とほぼ同じぐらいだった。とすれば、夕焼けの写真が撮られた時間には、稲葉は札幌にいた事になる。
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