第31章 北海道の七夕

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「残念ですね。北海道は、そんなに高速道路網が発達していないんですよ。高速は、札幌から旭川までです」 「そんなもん、ヘリか飛行機を使えば何とでもなるわ」 「まぁ、そんなに疑うのならご勝手にどうぞ。そうだ、思い出しましたよ。あの日の夕食は、札幌駅の駅ビルにある寿司屋で友人と一緒に食べましたよ」 「ふん、取ってつけたような嘘を言うな。証拠はあるのか。あるなら見せてみろや」 「確か、レシートが、まだ財布の中に入っていたはずです」  稲葉は、財布からレシートをごっそりと出した。そして、机の上に広げて、その中の一枚を引き出した。 「あった、これこれ。刑事さん、このレシートを見て下さいよ。七月七日の午後7時10分と書いてあるっしょ」と勝ち誇った顔をした。  木内は、レシートをふんだくって見た。  レシートの発行時間は、七月七日、午後7時10分、住所も札幌市となっていて、電話番号も書いてあった。 「ここの回転すし屋は、なまら旨いんですよ。もし札幌に行く事があったら是非寄って下さいよ。花丸っていう店です。根室から直送しているから鮮度は抜群です。それに、北海道ならではのネタが、なまら旨い。あの日、食った寿司では、赤ゾイという魚がうまかったなぁ。見た目は鯛のような感じで、舌の上に乗せるとトロリとした甘みがあって旨かったなぁ。あれは絶品だったなぁ」  木内は、レシートを注意深く調べたが偽造している訳ではなさそうだった。  発行時間が、午後7時10分と、七月七日の日の入り時刻とほぼ同じぐらいだった。とすれば、夕焼けの写真が撮られた時間には、稲葉は札幌にいた事になる。
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