第31章 北海道の七夕

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 何処かにトリックがあるに違いないと木内は思ったが、その場で見破ることはできなかった。  二人の不倫関係がばれるのを怖れて、愛子と稲葉が、矢崎と石墨を殺害したと、木内は推理していた。  写真を突きつけて、稲葉を自供に追い込もうという木内の目論見は外れてしまったので、攻め所を変えることにした。 「次は、これだ。このネックレスに見覚えがあるだろう」  ネックレスを見た瞬間、稲葉の顔に動揺の色が走った。 「そっ、それは、若しかして」と生唾を飲んだ。 「そこに、Iの刻印がある。あんたなら当然、見覚えがあるよな?」  木内は勝ち誇って言った。 「見覚えがあると思いましたが、気のせいのようです…」 「ほう、しらばっくれる気か」  木内は、ドス利かせた声ですごんだ。 「すっとぼけても無駄だぞ。これが、愛子の物だというのは、分かっているんだよ」  金子が机を叩いた。 「何だ、最初から知ってたんですか。刑事さんも人が悪いな。確かに、これに似たネックッレスを副社長がしていたのを見たことがあります。でも、数回見かけただけなんです。」  稲葉は、拍子抜けするぐらい、あっさりと認めた。  木内の予想では、稲葉にこのネックレスを見せても、しらを切り通すと思っていた。 「あんた、何でこのネックレスを見せた時に、直ぐに愛子のものだと言わなかった?」 「だから、確証がなかったんです。見かけたのは、何ヶ月も前ですよ。そんなの一々、覚えてませんよ。もし、僕の勘違いだったらどうするんです。無責任な事は言えませんよ」と開き直った。
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