第5話

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(もう、ダメだ。押し切られる……。……ごめん。みんな) あたしは半ば心の中で諦めてしまった。 圧力に押されて両手を離す。目を瞑り来る黒炎に備える。だが、 「な、何!?」 ベリアルが何かに反応する声が聞こえた。それに何時まで経っても黒炎は来ない。 再び目を開けると、あたしの手は何人かの手に支えられていた。 「……えっ?」 「――諦めちゃ駄目です。勝って世界を救いましょうよ。時玻さん」 「あ、天乃?」 「時玻だけにいい格好させたりしないぜ?あたしも混ぜろよな!」 「ひ、火那!?」 「遅れて済まん、時玻。色々とこの手の問題は処理が大変でのう。少々待たせてしもうたわい」 「虎丸!?」 「私もお手伝いに来て差し上げましたわよ。時玻。ありがたく思いなさい」 「村正!?」 気が付けばいつもの顔ぶれが揃っていた。全員があたしの手を支えてくれている。 「あんた達……どうやって――」 「――仲間の分だけ強くなれる。いい能力じゃない。時玻」 腰に巻いた扇子を抜き取り、それを使って優雅にその人は風を煽いだ。 『全く……。あなたには敵いませんね。まるで自分の思い通りに事を運んでいるみたいだ』 晴明がそう言って肩を落とす。 「ふふふ、褒め言葉として受け取っておくわ。晴明さん」 たった二日、顔をみなかっただけだが、これほど嬉しい再会があっただろうか。 「師匠……生きて……」 「えぇ。訳あって今の今までそっちに顔を出せなかったのよ。ごめんなさいね。時玻」 「じゃあ、火那達を連れて来たのって……」 「えぇ。私よ。一人じゃ何もできないだろうから、連れてきてあげたわよ」 クスクスと笑いながら師匠を横目にあたしは拍子ぬけた溜息をついた。 「どうしてこうあたしの身の周りには危なっかしい奴ばっかりなのかしら……」 師匠から顔を背け、防衛している結界へと目を向ける。 内心ホッとして泣きたくなっているのは内緒だ。 「ふふふ。確かにそうね。それにしても、その術。少し無茶してるんじゃない?」 ふいにそんなことを師匠は呟いた。 「……そりゃしてるわよ。見たらわかるでしょ?」 「ただ感情をぶつけてるからそうなるのよ。もう少しやり方があると思うけど?そんな強引なやり方じゃなくて、もっと優しいやり方が」 「はぁ?」
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