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結界に大きな亀裂が入る。一度はあきらめかけた結界だ。耐久度的に長くは持たない。
「まずいです!時玻さん!」
「このままじゃ全員焦げ肉になっちまうぜ!?どうすんだよ時玻!?」
「冗談じゃありませんわ!?時玻!なんとかしなさい!」
「どうするんじゃ?時玻」
「ああーもう!めんどくさいわね!ちょっとくらい考えさせなさいよ!」
ただ感情をぶつけるだけじゃなく、もっと優しくするやり方?
亀裂は徐々に大きさを増す。せかされる時間の中であたしは結論をはじき出す。
「…………こんな術じゃなかったわ。あたしが完成させたかったのは――」
全員の手を強く握り返し、あたしは前を向いた。
「――この世界に来てよかったってみんなが思える様な、そんな術よ!」
結界が私の思いに反応し、より鮮明に、より色鮮やかなものへと変化していく。
黒炎もその勢力を吸い取られるように収縮されて行き、やがて消滅した。
亀裂もヒビも修復され、星空に並ぶ星座のようにきれいな七色の結界が出来上がる。
実に神々しい。そしてなりによりも、美しい。その場にいた者達はきっとそう思った事だろう。
「な、なんだあれ……」
「……凄く綺麗です」
「すっげぇ……こんなの見たことないぜ」
「確かに、そうじゃのう」
「エクセレントですわ」
そう。これがあたしの夢幻輪廻転生だ。
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