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人も妖怪も悪魔も、心を惹かれるような美しい景観を作り出す、最強の術。
『流石はあなたのお弟子さんだ。この短時間の成長もお見通しだったんじゃないですか?』
「さぁ?どうかしらね」
後ろで晴明と師匠が何かよくわからない話をしていたが、あたしは構わずに、倒れているベリアルに向かって声をかける。
「……勝負、あったわね」
「くっ!」
ベリアルがまだ身構えようとする。それをあたしは無駄だと静止させた。
「あんたはもう術を使えないわ。諦めて自首しなさい」
あたしの言葉を素直に受け入れたベリアルはすんなりと警戒を解いた。
そのままの流れであたしは地獄への門を開こうと準備にかかる。
辺りでは天乃達が嬉しそうに飛び跳ねて、ただひたすらに勝利を喜んでいた。
「……あれが……」
「ん?」
「あれがお前の作りたい世界だったのか?」
仰向けになったベリアルがあたしに語りかけてきた。
「えぇ。そうよ。悪くないでしょ?あぁ言うのも」
ニヒッと笑ってあたしは答える。
「……余りにも綺麗過ぎるだろ。眩しすぎて実現なんかできない」
ベリアルは苦虫を潰した表情をしてそういった。
あたしは黙ったままその言葉を聞き流す。
「ただ……まぁ、悪くないかもな、実現出来たら。良い世界になりそうだ。お前の世界は」
あたしは一瞬呆気にとられた。そして確信した。
「……ふふ。そりゃどうも」
――ちっぽけなこのあたしがこの悪魔の心をほんの少しでも変えられたのだと――
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