第5話

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村に着くとそこは火の海だった。村の人達は逃げまどい、悲鳴や叫び声を上げている。 地獄絵図だ。妖怪の私が百鬼夜行を見るよりもはるかにそう思える。 私は逃げ遅れている人がいないか、混雑している道中を掻い潜り、探す。 『だれかぁ!たすけてくれぇ!』 すると途中、倒壊した家に下敷きにされ身動きが取れなくなっている老人を見つけた。 「大丈夫ですか!?今助けます!」 扇で風を送りそのまま屋根を吹き飛ばし老人を助けた。 見たところ目立った外傷もなく、ほっと胸を撫で下ろす。 『ありがとうございます!あと、あの子も救ってやってくれい!』 「あの子?まだ誰か埋まってるんですか?」 『今ワシらの為に化け物と戦ってくれとるんじゃ。あの子も早う逃げんと死んでしまう!』 「……まさか」 この村で唯一戦える人って。 「わかりました。お爺さんは早く逃げて下さい。後の事は私がなんとかします!」 そう言って人の流れに逆らって走り抜ける。その抜けた先は、 「はぁ…はぁ。手強いなぁもう……」 背中で気絶した小さな女の子をかばって戦っている陽真里さんの姿が目に入った。 「陽真里さん!」 「天乃ちゃん?来てくれたんだ……」 呼吸も乱れて、何より切り傷や痣があちこちに広がっている。 「ボロボロじゃないですか……今すぐ処置を!」 「処置なんか、あとだよ。今は…あいつをどうにかしないと」 「あいつ?」 陽真里さんの目線を辿る。 「ほう。あの、騎士の群れを掻い潜って来たか」 さっき見たばかりの人物像そっくりな奴がそこには浮かんでいた。 全てを壊すことで世界を救うなどと言う思想を持つ、西洋妖怪最悪の神。 「ベリアル……」 「まぁいい。誰が来ようと破壊するだけだ。それでこの世は救われる」 これだけの騒ぎが起こっているのに、時玻さんが来ていない。 (一体どこにいるんですか?時玻さん)
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