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「大丈夫だよ。天乃ちゃん」
「え?」
「時玻ちゃんは必ず来るよ。性格は適当だけど、仕事をさぼった事は、一度もなかったから」
祓い棒を地面に突き立て杖代わりにし、陽真里さんはゆっくりと立ち上がる。
「だから、あの子が来るまで時間を稼ごう。それだけが私達に出来る事だよ」
体はボロボロ。見た感じ負け戦に挑む少女の姿。それでも、まだ目だけは死んでいない。
心も折れていない。普通なら弱音を吐く。でもそんな様子は全くと言っていいほど感じない。
「強いですね、陽真里さんは。時玻さんの助手です」
「あはは……。ただの強がりだけどね」
「お喋りはそこまでだ。仲良く死んでもらうぞ!神魔術【廃残の針山(スクラップマウンテン)】」
幾何学的な紋章の様なものが地面に描かれ、針山が次々と生成される。
まるで錬金術だ。
「そう簡単には死ねないかな!神術!」
私の背中に札を張り付けると、両手を叩き乾いた音を響かせる。
「えっ!?」
「やっちゃって天乃ちゃん!【神託・風来神】!」
背中を思いっきり叩かれる。その時、私の中に何かが流れ込んで来たのを悟った。
「神妖術【神風双龍牙】!」
「な!?」
今まで感じた事が無い風の流れ。操る私も風圧で飛ばされそうだ。
風の龍が迫る針を一網打尽にし、ベリアルに噛みつく。
そのままそいつを地面に叩きつけると術は途切れた。
「この力……、陽真里さん。一体何を?」
「私の戦闘スタイルは神の力を他人へ譲渡するサポートタイプなんだ。天乃ちゃんに渡したのは風来神の力。風の妖力を操る天乃ちゃんになら上手く扱えると思ってね」
「く、油断したか。次は食わん」
瓦礫からのそのそと這い上がってくる悪魔。少しだがダメージを蓄積した筈だ。
「天乃ちゃん!次行くよ!」
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