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「ふん。何を言い出すかと思えば、もういい。死ね」
徐々に手に力が籠る。着かない足をばたつかせ、抵抗を試みるがそんな努力も空しく、意識が遠くなる。……もう駄目だ。ベリアルの手を押さえていた私の手が下降線を描いた直後。
「――っ!?」
ベリアルの腕が切断された。噴き出てきた血が私の顔や服を赤く染める。
「ぐわぁぁぁ!」
「ケホッ!ゴホ!はぁはぁ…な、なんですか?一体…」
『大丈夫ですか?天乃さん。助けに来ましたよ』
陰陽師の服装をした何者かが私の隣に駆け寄ってくる。
「コホッ!……ありがとうございます。お陰で助かりました」
『いえいえ。間に合って何よりです。我が主様もきっと喜んでいることでしょう』
(主様?)
よくみると、霊体特有のモヤが彼には見られた。
じゃあこの人……式神か何かで呼ばれてここに?
「ぐっ、ぐぐぐ……!誰だ!?」
ベリアルの怒号が響く。
「ははは……全く、遅いよ。……ボロボロになっちゃったじゃん……」
「よく頑張ってくれたわ。陽真理」
何処か落ち着きのある声。それでいて安心感を与えてくれる様な声質。
「……えへへ。ちょっと……休むよ。疲れ…たから」
「えぇ。終わったあとで起こすわ。今はゆっくり休みなさい」
後ろで二人の会話が聞こえた。
(この声……まさか)
『主様、無事に助けられました』
「ありがとう、晴明。にしても酷い有様ねー。あたしがいない間に好き勝手やってくれたみたいじゃない?ベリアル」
「貴様ぁ!お前だけは絶対に殺してやる!!」
ベリアルが顔にシワを寄せて物凄い剣幕で叫ぶ。
切断された腕から触手のようなものを蠢かせ、いかなる法則か、新しい腕を生成する。
「その言葉そっくりそのまま、いや何倍にしても返してやるわ」
頭の上にずっしりとした何かが乗っかる。
ふと目を上に向けるとほくそ笑み、手を振ってる時玻さんがいた。
「時玻さん……!」
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