第5話

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「晴明。やるわよ」 『仰せのままに。主様』 「仲良しごっこはもう終わりか?この死に損ない」 晴明が切ったはずのベリアルの腕が元に戻っている。 化け物ね、本当に。 「次は再生出来ないくらい完膚無きまでに叩きのめすわ」 「はっ!やれるものならやってみろ!神魔術――っ!?」 『――させませんよ』 先に動いたベリアルの後ろへ回り込んだ晴明がいち早く行動を取った。 普通の式神じゃこうは行かない。 意識を持った式神人だからこそ成せる立ち回り方だ。 契約に苦労したことだけはある。 「晴明。神術【明鏡止水】!」 「くそっ!」 晴明の刀が膨大な気を放ち、ベリアルに差し迫る。 それを目の当たりにしたそいつは素早く防御に転じる。 それを待っていたあたしは、 「【憑依】烏天狗!」 天乃の手を掴み、憑依の準備にかかる。 「その手は食うか!魔弾【虚無の倫理ヴァニティーロジック】!」 突如、魔力を具現化し、晴明の刀を掴んだベリアルは、空いた両手で魔法陣を描く。 『なっ!?しまった!』 「っ!」 そして負の感情を言霊にして射出。一直線にあたし達のいるところへ着弾した。 「へっへっへ。呆気ないなぁ。弱すぎて反吐が出る。お前も吹き飛べ!」 魔力で強化した剛腕の拳が晴明の懐にヒットする。 『く、ぐわっ!』 「弱い!弱過ぎる!でかい口叩く割にはアリ以下だ!」 「だったらあんたはそのアリ以下に負けんのよ」 「――はっ?」 体の中にあふれる清々しい妖力。それでいて少しの量で暴発してしまいそうな高純度の妖力。 (これが、天乃の力……。使い方次第じゃ化けるわ。きっと) 「神妖術【旋風の風物詩】!」 銀色の鱗粉が塒めき、その規模はベリアルを中心に拡大する。 そしてそれらは中心に波を描くような形でベリアルを覆った。 目に見えない金属を纏った暴風。直撃すれば一溜まりもない。 (やりました!) 「まだよ」 あたしの予測通り。ベリアルは発生した風ごと魔力で打ち払い、再び姿を現す。 「少し焦ったぞ。まさかお前が半妖だったとは」 背中から綺麗な黒羽を生やし、透き通っていた黒い瞳は赤く染まる。爪も鋭く尖り、纏っている妖力のせいか、服自体もモノクロになっていた。 「あんたみたいな野蛮な妖怪と一緒にしないでくれる?」
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