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片目を瞑って馬鹿にした様子で指を差す。
「なんだと?」
「これはあたしの特異体質。【人妖変化】よ。理想の世界を作る為にこの世界が与えてくれた、あたしだけの武器。仲間と一緒なら、あたしは幾らでも強くなれる」
ベリアルは鼻で嘲笑うと、首を横に振った。
「……くだらないな。実にくだらない。妖怪と共同して戦うだと?ばかばかしい。そもそも君は人間だろう?陰陽師とか言う巫女の一人なんだろう?君は妖怪を処す側の人間だ。何故そんなバカげたことをする?いや、それだけじゃない。お前は世界を救うと言った。私も一度この世界を壊して救ってやると最初に言った筈だ。最終的な目的は同じ。何故私の邪魔をする?
最後の遺言に聞いてやろう」
「………………」
あたしは黙ったまま地に足を付け、ベリアルのところへとゆっくり歩き出す。
「憑依解除」
「えっ?時玻さん?ちょっ、何処行くんですか!?待って下さいよ!」
そんな呼びかけにも足を止めず一直線にベリアルを目指す。
だが、一度にあたしの行く手を阻んだ者がいた。
『主様!?それ以上の接近は命にかかわります!どうかお下がり――』
「――晴明、少し下がってなさい」
『なっ、主様!』
「これがあたしの妖怪退治(やり方)よ。邪魔しないで」
有無は言わせない、そんな瞳で訴え、晴明を黙らせる。
『……わかりました。どうか御無事で』
すると彼は不服そうにあたしの顔を見送った。
そしてあたしはとうとう手に届く位置でベリアルを前にした。
「いいのか?護衛を付けなくて」
「会話をするのに武力がいるのかしら?あたしはそんな経験一度もないんだけど」
「つくづく面白い事を言う巫女だな。僕は破壊と殺戮の神だぞ?今この瞬間でも君を殺すのはたやすい。警戒を怠らず武力をもって会話に挑むのが普通だとは思わないかい?」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべるベリアル。
お前の心臓は今、私の手の中にあるとでも思ってるんだろうか?多分そうだろうけど。
「あたしは思わないわ。なにせ常識外れの巫女をやってるもんだから」
あたしは耳に入ったごみを取りながら答える。
その瞬間。
「――っ!」
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