第6話

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「結局、その子を召喚した人はいなかったわ。あなたの友人から聞くと、この世界が不安定な世界、つまりは不満の募った世界に傾くとなんの前振りもなく出現するってことらしいの。ひょっとするとまた現れるかもしれないわね。時玻」 「二度目とかホントに勘弁してもらいたいわ。現れない事を祈るばかりよ」 あれから数日。燃えてしまった村の家の再建や、荒廃してしまった農地の開拓、その他傷を負った村人達の治療など、まだまだやらなければならない事が高山の様にたくさんあるが、あたしと師匠は自宅でのんびりとお茶を啜っていた。 「それにしても、静かでいい場所ね。ここは」 ぽかぽかと暖かい陽の光を浴び、春のそよ風を肌に感じながら師匠はそう呟く。 「そりゃそうよ。あたしのお気に入りの場所なんだから。ていうかよかったの?まーた仕事サボって。そのうちお目付け役の人に本気で怒られるわよ?」 あと二、三日もしないうちにお目付け役の人がここに来て、首根っこ掴まれて連行されてゆく師匠の姿が目に浮かぶ。まぁそうなったって助ける気は毛頭ないけど。 「いいのよ。仕事は何時でも出来るけど、時玻と会えるのは今しか出来ないんだから」 「はぁ……。よくもまぁそんなサボる口実が流れるように言えるわねぇ。弟子が聞いて呆れるわ。……もう呆れてるけど」 そんな心にもない言葉を口にして、あたしは肩を竦める。 「……ねぇ。時玻」 「ん?今度はなによ?」 「あなた、どうしてこの世界を救いたいって思ったの?」
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