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のに。
同じ講義をとっていた後輩に泣きつかれて、現在クラブボックスの掃除中。
どこをどうやったら、これだけ散らかせるんだ?
つーか。
俺、4回生よ?
最上級生だよ?
何故に、俺が仕切って掃除してるわけよ?
しかも、だ。
家事ができることを理由に彼女に振られたっていうのに、掃除って、家事じゃねーかよ。
俺、傷心中なんだけどな。
生傷、ズッキンズッキンしてる最中なんだけど。
そうは思いつつも、求められたら断れず。
しかも、本気であまりの惨状に、渋々手を貸してしまったわけだ。
「とりあえず片付けたけどさぁ…お前ら、出したら片付けろよ。そんだけでも、もちっとマシだからさ」
「いや~、ハルタさん、まめっすね」
俺に泣きついてきた後輩は、悪びれずに頭をかきながら笑う。
「習性」
これくらい洗って片付けとけ、と最後に机を拭いた雑巾を投げる。
うん。
別にマメなわけじゃない。
家でしてることの延長。
習性。
好きなわけでも、なんでもない。
出来ることと、好きなことと、得意なことは違う。
断じて違う。
「おれ、ハルタさん嫁にほしいっすよ」
「いや、俺はふつーに彼女がほしいよ」
へらへらと笑いやがる後輩に嫌がらせをするわけでもなく、呟けば。
地雷を踏んだ顔をして、一瞬言葉に詰まりやがった。
あ、知ってるんだ。
まぁ、所詮はサークル内恋愛。
事の顛末なんていつの間にやら知れ渡ってるもんだろう。
俺の耳にだって他のヤツの恋愛話は入ってくるんだし。
「あー、でも、下手な女子より、ハルタさんのほうがまめじゃないすか?」
「だろーねー。俺、家でも家事担当だから」
「ああ、ソレで習性…」
雑巾片手に納得の顔をしている後輩を見て、ふと、疑問。
「言ってなかったけ?」
「何がっすか?」
「俺んちの事情」
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