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そうやって、少しずつ自分の気持ちに折り合いをつけて、淡々と時間は流れる。
いつもそうだ。
何が起こっても。
俺的に天変地異が起こったくらいの気分になったって、世界にはなんの関わりもない。
平等に時間は過ぎていく。
だから、その話を聞く気はなかった。
断じてなかった。
正直なトコ、むしろ聞きたくなかった。
だけど、聞こえてしまった。
俺のバイト先は、大学の図書館だ。
主な業務は力仕事。
リファレンスとか個人情報扱うのなんかは、もちろん、俺の仕事じゃない。
それでも図書館っていうのはいろいろと仕事があるもので。
返却された図書を元の場所に戻すのも、バイトの仕事。
そして、いつものようにバイト先の図書館で、書庫に返却された本を返してるときに
「先輩と別れたって?」
「うん」
ぼそぼそと聞こえてきたのは、聞き間違えようのない声。
どこのラインにいるのかはわからないけど、そう離れてないところで、元カノが話してる。
「何でよ?あんだけ騒いで付き合ったくせに」
「好きだったんだけどさぁ、あたしより料理も炊事洗濯もうまいわけよ」
あー。
そうだった。
そんなメール一つで俺は振られてしまったんだ。
「ええ?訳わかんない。そんな理由?」
「つーか、だって、正直、キモい」
「そこまで言う?」
「上手なだけならいいのよ。でもさぁ、チラシチェックとかしてるやりくり上手な大学男子ってどうよ?一人暮らしならまだしも、実家って言ってたんだよ?」
うっかり聞いてしまった、そんな台詞。
キモいって…
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